最近のブロックチェーンゲームは、最初にNFTを買って、それを使ってゲームを遊び、トークンを獲得して、換金する、という流れが定番です。ユーザーが得られる資金の原資は、ユーザーが買ったNFTの代金であり、ゲーム的なランダム性があり勝ち負けはあるものの、全体での期待値は払った金額でしかないというケースが大半です(実際には運営の取り分もあるので、期待値マイナス)。
そこに一石を投じたのがスクウェア・エニックスが提供している『資産性ミリオンアーサー』です。スマートフォンから数タイトルが開発されてきた「ミリオンアーサー」シリーズの最新作であり、デジタルシールを集めるというゲームプレイが中核にあります。本作について、WebXでプロデューサーの畑圭輔氏が語りました。

畑氏はまずゲームリリースから学んだ事として「多様な人による参加」と「コミュニティの大切さ」の2点があったと振り返ります。
「『資産性ミリオンアーサー』は非常に多様な人に遊んでもらえました。ゲームを楽しみたい、という人に加えて、投資家として収益を上げたいという人、マーケットをウォッチしたい人など実に様々でした。ここは今までのF2P(フリー・トゥ・プレイ)のゲームと異なる運営の難しさがありました」
「また、コミュニティの大切さを学ぶことができました。4月下旬にゲームをリリースしてから、毎日Twitterでお客さんと会話をしています。リアルタイムに会話をしたり、返事をしたりすることで、ファンになってもらって、エンゲージメントを高めてもらうというのがゲームにとってとても大事でした」
また、ゲーム開発においては「私自身が一番のファンであるということを大事にプロダクトを作りました」と述べました。「フィジカルシールと同じような楽しさをデジタルシールでも実現したいと思い、その魅力をTwitterでも発信しながら運営しています。それに共感する人が一人、また一人と増えているのを実感しています。とにかくお客さんがワクワクするような体験を届けたいという思いで、一つ一つ丁寧にやっています」
ブロックチェーンゲームをマスアダプションさせるには? という観点ではLINEブロックチェーンでの展開が重要だったと畑氏は振り返ります。「LINEブロックチェーンはプライベートチェーンで閉鎖的な環境だと言われる事もありますが、NFTも正規のものしか流通しないなどのメリットもあります」
さらに、LINEの環境を活用することで、最初から最後まで無料で遊べながら、お金を稼いでLINE Payにチャージして、それで何かを買う、というところまで完結できているということです。
「LINEのお陰で、完全に無料で遊べて、無料でNFTをゲットして、無料で出品するところまで実現できています。しかも、これまで120万のNFTを発行しましたが、今でも出品すれば1分以内で売れるような状態になっています。その収益はLINE Payのクレジットとして得られるので、決済で色々なお店で使えます。ゲームで遊んで、普段使っているLINE Payで生活に使えるという体験はマスアダプションの成功事例と言っても良いのではないでしょうか」
補足すると、LINEということもあり、LINEアカウントさえあればウォレットの作成が非常に簡単で、一旦ゲームを初めてしまえばブロックチェーンの存在を意識せずに遊べるという点もマスアダプションにとって前向きな部分ではないかと思います。
『資産性ミリオンアーサー』で取引されているNFTは他と比べると高額ではなく、数百円が主流です。そこにコレクション要素が相まって、買いたいというニーズを生み出せているようです。売る側にとっても、無料で始められて、頑張れば数百円でも実際にリアルで使えるお金が手に入るというのはなかなか無い体験でしょう。
シールを購入するだけでなく、そこから繋がる体験なども徐々に生まれていっているということで、『資産性ミリオンアーサー』の今後が楽しみです。ゲーム会社ならではのクリエイティブの秀逸さ、バランスの巧みさもあるのでしょうが、ブロックチェーンゲームの一つのあり方として参考になりそうです。