IVSが再び京都でおこなわれました。開催期間は7月4日から6日の3日間。開催場所は京都パルスプラザこと京都府総合見本市会館で来場者数は昨年比なんと2割増の12000人。2回目にしてすでに京都屈指のメインイベントとなりました。ただ、「IVSの真価はサイドイベントにあり」と言われる程、業界を震撼させるような新情報が実はサイドイベントで飛び交いがちというのもIVSの伝統。(例えば昨年のこの記事をご覧ください)
そのような意味で、IVS 2024のサイドイベントとして7月6日、京都市内において開催されたTON JAPAN MeetupはWeb3 Game界隈にとってまさにスクープと言っていいような初出情報と熱気であふれていました。
鉄壁のセキュリティを誇るテレグラムがTONを通してWeb2とWeb3をシームレスに統合
Telegram(テレグラム)というと、鉄壁のセキュリティで情報のやりとりができるコミュニケーションアプリとして知られていましたが、それをプラットフォームとした仮想通貨構想が生まれました。それがTONです。
TON JAPN MeetupではTONに関する現状と展望、さらにそれを活用する用途としてのWeb3ゲームについて紹介が行われました。50名の枠になんと、400名ほどの応募があったとのこと。そのため、会場は終始熱気で包まれており、その興奮で時には発表内容が聞こえにくくなるほど。それ以上に驚きだったのは、
本来IVSのメインイベントの主要スピーカーになってもおかしくないような人たちがお忍びで参加していたこと。ここから如何に国内業界の多くのひとたちがテレグラムのWeb3戦略に関心を寄せているかが分かります。本稿ではその講演内容とその後、筆者がおこなった関係者インタビューをお伝えします。
9億人のテレグラムユーザーにとってのWeb3サービスへのゲートウェイを目指すTON

最初にTON JAPANの佐々木亜留氏より、TONの現状と今後の展望に関し、テレグラムとの関係をからめて説明がなされました(スライドはXで公開中)。現在、テレグラムは全世界のユーザー数が約9億人に達し、LINEの約9600万人と比べて約10倍の規模になっているとのこと。また、ユーザー分布は、インド、ロシア、インドネシアが中心ではあるもののグローバルに広がっていると佐々木氏は補足しました。
TONはこのテレグラムと密に連携したブロックチェーンで、喫緊の目標としては全テレグラムユーザーに対する30%の使用率を掲げています。Toncoinの時価総額が約6.6兆円に達したのに加え、アクティブウォレット数がイーサリアム用ウォレットを超えるなどで注目されているとのこと。NFTアートやゲームでの採用率が高いイーサリアムのウォレット数すら上回るのは驚きです。
さらに、佐々木氏はTONの特徴の一つであるテレグラム内に設置されたTelegram Apps Centerについて説明しました。これは、TONを決済手段とするアプリストアでTON上のアプリが910ほどある中、Telegram Apps Centerでリリースされるアプリは300強。特にゲームが多く、全体の3割程を占めるそうです。ユーザーもかなり積極的にゲームプレイに勤しんでいます。
例えば、2023年3月26日リリースされた育成ゲーム『Hamster Kombat』はリリースしてから約3ヶ月で2億3900万ユーザーを突破したとのこと。ゲーム内で稼いだお金を使ってアイテムをレベルアップすることで利益を増やしていく仕組みが評価されたのです。同様に『Catizen』もリリースから3ヶ月後で2000万ユーザーを獲得。 累計売上が18億円に達しています。
同時に強調されたのは、TONがテレグラム上での広告収入やアイテム取引など、ブロックチェーンを活用した様々なサービスを提供していることです。このようなこともあり、現在ストアにリリースされてから、30日と立たないうちにユーザー数100万人を、50日から60日で300万人を突破するゲームも数多くあると佐々木氏。
クレジットカード、Apple Pay、Google Payに対応したTONの決済
マネタイズする方法としては、テレグラム上ではクレジットカード登録によってTONでの決済が可能になっているのに加え、Apple PayやGoogle Payに対応し、クレジットカード登録が不要な決済方法としてTelegram Starというサービスが提供されているとのこと。これでポイント課金などが可能となります。また広告枠の提供といったハイパーカジュアルゲームなどでもおなじみのマネタイズ方法も準備されています。
また。デベロッパーにとって重要なのはサポート。この点においてはTON Foundationが積極的に支援をしていると佐々木氏。それはIDEA STAGE(企画段階)、MVS&First Traction(アプリのリリース前後から初期段階まで)そしてGrowth &Scaling(グロース段階)と、段階に応じたサポートがあることを紹介し、その手厚さを示しました。
その中でGrantといわれる助成金は現在応募が殺到しているため開発済のタイトルのみが優先されるものの、技術サポートやミートアップによる支援は開発段階からおこなっているとのこと。ゲームがリリースされた後は、The Open Leagueなどのようにゲームを特別にフィーチャーさせる機能を活用したサポートやマーケティング的なサポートでも支援するとのことです。
このように様々な可能性を秘めるTON決済手段としたWeb3アプリ開発ですが、TON JAPANは現在、日本企業向けに、TONに関連する公式ドキュメントの日本語化を進めつつ、TON導入に関する支援や技術サポートを無償で提供すると発表。アイデアレベルでのブレストや技術検証用のコード提供からマーケティング支援、並びに今回のMeet Upのようなコミュニティ間における情報交換の場の提供など多岐にわたって行うことを約束しました。
TON Foundationが夢見る、Toncoin活用によるテレグラムWeb3サービス転換への道

佐々木氏による発表の後は、TON Foundationのコミュニケーションマネージャを務めるVivi Xu氏が「ToncoinでテレビグラムをWeb3に転換」と題した講演をおこないました。Vivi Xu氏は、まずTON Foundationのビジョンが、「テレグラムユーザーをWeb3エコシステムへとシームレスに統合することで、Web3の大規模な普及を推進することにある」と明言。
TONは既にテレグラムウォレット、テレグラム広告、およびセキュリティ的に堅牢なTelegramアカウントの活用をブロックチェーン技術によって促進しているとのこと。膨大なユーザーベースを持つユニークなWeb2メッセンジャーとして際立っているテレグラムにこれらのWeb3技術を統合化することでイーサリアムやMetaMaskなど、従来のWeb3サービスと比較しても優れたユーザー体験を提供できると強調しました。
冒頭のビジョンとして示された「大規模な普及」は「Mass Adaption」との発言を訳したものですが、TONを決済手法とした一連のサービスがテレグラムユーザー間で普及すればまさにWeb3の「Mass Adaption」が即座に実現するかもしれません。
国内Web3ゲームデベロッパーはTONの可能性をどう見る?


これらTON JAPANならびにTON Foundationからの発表の他にアプリ制作スタジオも何社か発表していました。その中でもWeb3ゲーム開発スタジオによる発表をいくつか紹介します。
まずはCryptoGames(クリプトゲームス)株式会社CEOの小澤 孝太 氏によるプレゼンから。2018年からブロックチェーンゲーム開発を続けてきた同社は国内Web3ゲーム開発界隈の中でも知られた存在となっています。同社は、TONが急速に普及しているという情報を得てなんと2週間ほどで開発したのが、『TonFarm』。ゲームメカニクス自体は畑に作物を植え、一定期間かけて育成し、収穫することでダイヤが獲得できるといったオーソドックスな農業シミュレーション系ゲーム。それでも2週間強の開発及びテスティング期間を経て7月10日にβ版のリリースしたのには驚き。マネタイズなどについては今後検討を重ねていくとのこと。
もう一方は、Nobollel CEO黒川晃輔氏による発表。同社は2013年10月に創業以来、総数にして100本以上のゲームを開発してきたベテランゲームスタジオ。その種類もハイパーカジュアルゲームから、IPを利用したゲーム、そしてブロックチェーンゲームと多岐にわたるとのこと。したがって、TONにいきつくのも自然な流れでした。
今回、紹介していたのが『Ice Cream Please !』。7月3日にリリースされた同作は日本初のテレグラムむけ3Dハイパーカジュアルゲーム。ミッション達成型経営シミュレーション系ゲームでUnityを活用して開発されました。まだマネタイズについては想定していないものの、今後もこのようなカジュアルゲームを開発していきたいとのことです。
イベント後にはインタビューを敢行。開発者側とサービス提供側の視点から生の声をお届け
およそ2時間にもおよびミートアップではTONについて様々な視点からお話を伺えたのですが、ミートアップの利点はカジュアルにインタビューが出来るところ。今回は、登壇されていた方々の中から国内スタジオの中でも最速でTelegram Apps CenterにゲームをローンチしたNobollelの CEO、黒川晃輔氏とTON Foundationで Developer Relationsを担当しているAlex Golov氏のからお話を伺うことが出来ました。