「稼ぐ」という側面が強調されがちなブロックチェーンゲーム。ゲームを投資対象として見ると、『STEPN』や『Axie Infinity』のように急速に注目を集め、トークン価格も上昇し、一時は非常に稼げたものの、ブームが一巡するとトークン価格は低迷し、なかなか稼げない状態になる、というゲームが大半です。
そもそも大半のゲームはポンジスキーム(に類する、と言っておきましょうか)であり、稼ぐ原資はユーザーが投じたお金であることが殆どです。つまり新しいユーザーがどんどん入ってくる状態でなければ、稼ぎ続けられる状態は続かない、というのが定説です。そして稼げなくなることでゲームは急速に廃れ死に至ります。しかし、持続可能(サステイナブル)なゲームを作ろうと、世界中の開発者がトケノミクスにチャレンジしています。果たしてそれは可能か? という大きな命題にdouble jump.tokyoの上野広伸CEO、Oasysの松原亮CEOが挑みました(司会はYGG Japanの藤原哲哉CEO)。
double jump.tokyoはブロックチェーンゲームとして『マイクリプトヒーローズ』を世界に先駆けてリリースしたメーカーであり、Oasysの松原氏も同社出身です。ということもあって、ハードなテーマながら穏やかな雰囲気でイベントは進行しました。
事業者にとってのサステイナブル
「事業者にとってはサービス終了しないことがサステイナブル」と話すのはOasysの松原氏です。『マイクリプトヒーローズ』ではNFTを2.5万ETH(当時の値段で5億円程度だったそう)ほどで販売することができ開発費を回収できたそうです。その後は、NFTの二次流通、コラボなどのイベント施策で安定的に稼いでいくという状態を構築できたと紹介しました。
dobule jump.tokyoの上野氏も「大枠の事業計画としては、サービス開始後の運営費はNFT流通などでのフィーで成立させ、開発費はトークンやNFTの発行(値上がり)益で回収するということを考えています」と述べます。会計的に言えば、PLの売上は小さいものの、BSが膨らむ(運営保有資産の値上がり)によって、バランスするという考え方です。
上野氏が強調したのはトークンもNFTも価格が上がる仕組みにしていく事の重要性です。「double jump.tokyoはNFTのトレーディングを軸にゲームを作っていて、NFTの価格は在庫を絞ると上がります。限定販売のNFTも終売になれば二次流通は上がります。一定のユーティリティがあれば欲しい人は必ず現れます」と市場を把握する必要性を強調。
さらに、「(現在開発中の)『三国志大戦』ではトークンでも驚きの提案をしたいと思っています」とコメント。「トークンも使い道があって、バーンをしていく、すると価格は上がっていきます」と述べました。『マイクリプトヒーローズ』では2018年当時、トークン発行についてのノウハウがなかったため、当初はトークンが発行されていませんでしたが、『三国志大戦』では最初からトークンを含めた経済圏をデザインしているようです。
ユーザーにとってのサステイナブル
ここまで上野氏が述べたのは、適切な需要が喚起され続ければ価格は上昇する(少なくとも維持できる)、ということです。他方、ユーザーにとってサステイナブルというのはどういう状態でしょうか。
「『原資回収』という言葉を言い過ぎるのは良くないと思っています。綺麗事を言うと、『遊び続けられる』をサステイナブルにしないといけません」と上野氏。トークン価格が上がり、沢山稼げたプレイヤーが出てくることで、マーケティング効果がある事は認めつつ、「そこに振りすぎるとサステイナブルは実現できません」という指摘です。
ただ、「ブロックチェーンという新しい技術を得て、大事なのは投資家という新しいプレイヤーを引き込んでゲーム業界のパイを広げることです。そのためにはトークンの価値が上がり続けて、さらにゲームが楽しいという状態を作る必要があります」と上野氏は述べ、トークンの価格を上げ続けるような機能を持たせることに意欲を示しました。
松原氏は『マイクリプトヒーローズ』の際に「士農工商」のような概念を考えたと述べました。「士はeSports的にゲームを極めて稼いでいく人、農はクエストを回って落ちてきたものを売って稼ぐ人、工はゲーム内のコンテンツ作成に貢献する人、というように様々な役割のプレイヤーが存在することで持続可能性が増すのではないか」ということです。
同様に上野氏は「プレイヤーはNFTに集中してもらって、投資家はトークンに集中してもらう、という棲み分けが上手くいくのではないか?」と話していました。少し前はデュアルトークンのような形態が流行りましたが、その点については「理想的にはデフレ型のトークンと、インフレ型のトークンの組み合わせだと思っていますが、まだ理解が追いついていないのでシングルトークンが良いと思う」ということでした。
サステイナブルを探す道のり
今後のトケノミクスはどうなっていくでしょうか?
松原氏は「でも結局、みんなポンジ大好きですよね」と述べ、最近も話題になったハムスターのベッティングゲームにも触れ、脳汁が出るような収益機会を求めるユーザーが多いと指摘しました。一方で、「Autonomous Worlds」(自律分散型世界)という概念が最近のイーサリアムのハッカソンでも取り上げられ、様々なプロジェクトが作られたように、『マリオメーカー』のように誰でも世界を作って遊びを提供できるブロックチェーンならではの提案がサステイナブルに繋がる可能性があると話しました。
上野氏は「NFTに価値の源泉を置いて、トークンはその媒介物として考えればサステイナブルは実現できると思います」とコメント。トレーディングカードゲームやスポーツ、MMO、メタバース、二次創作系などはそれに当てはまるとしました。最後に『三国志大戦』を秋(曰くゲーム業界の秋は長いそうですが)にリリースする計画で、驚きの提案もあると述べセッションを締めくくりました。