Suiは今年5月にメインネットでローンチした新たなブロックチェーンです。EVM互換ではない、ゲームに強いブロックチェーンとして注目を集めています。開発を進めるMysten Labsの共同創業者でチーフプロダクトオフィサーのAdeniyi Abiodun氏がIVS2023で講演しました。
同氏はビットコインの初期からブロックチェーンに携わっていて、VMWareやFacebookでブロックチェーンのプロジェクトをリードする立場にありました。ただ、十数年の歴史を経ても「仮想通貨は法定通貨に取って変わってはおらず」「L1チェーンはスケーリングに課題があり」「L2は信頼性や分散性の面で課題がある」と指摘しました。
Abiodun氏は「Suiは新しい世代のブロックチェーンで、様々な課題を解決する」と述べました。
ゲーム開発者にとって常に課題なガス代(チェーン利用の手数料)問題に対してもSuiは新たな提案をしています。ガス代は一般的にネイティブトークン建て(Suiの場合は $SUI)であるため、トークンが値上がりするとガス代も値上がりしてゲームを遊ぶ際の費用が増加してしまうという問題があります。Suiはトークン価格に応じてガス代が変化するという仕組みで、ドル建てで一定を保つようになっています。これによって開発者もユーザーも費用を予見できる状態になります。
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さらに「スポンサード・トランザクション」という仕組みも持っています。これはガス代をユーザーではなく開発者側が負担するというものです。ゲームなどのアプリを利用する際に、通常であればユーザーはガス代としてネイティブトークンを一定保有する必要がありますが、開発者が負担するのであれば不要となり、利用のハードルが下がります。チュートリアル段階だけは開発者が負担して導入を促進するなどの方法も考えられます。
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加えて「ZK Login」という仕組みも導入していて、ウォレットアプリではなく、OpenID準拠のGoogle、Facebook、Appleなどのサードパーティログインでゲームやアプリを利用できるようにするというものです。
ガス代自体が非常に安価というのも他のチェーンに対する優位性になります。100万個のNFTをMint(発行)した際のコストはイーサリアムが3300万ドル(!)に対して、Solanaでは25万ドル、Polygonでも3万ドルとなりますが、Suiでは僅か6600ドルで収まるそうです。ゲームではNFTの個数も多くなりがちですので、こうした安価なガス代は嬉しいところです。
Suiはメインネットでのローンチから1ヶ月で122万ユーザーが利用して、デイリーでアクティブなユーザーは2万人程度だということです。また、トランザクションは2000万回に届かない程度のようです。ローンチしたてのブロックチェーンで数字的にはまだこれからですが、機能的に優れている部分もあるので、成長に期待したいところです。
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