日本初のL1ブロックチェーン「Astar」を開発する渡辺創太氏が、28日より開幕したIVS2023 KYOTOのクリプトステージに登壇し「Astar: Web3 Mass Adoption and Our Strategy」(Astar: Web3のマスアダプションと私達の戦略)と題して講演しました。
冒頭、渡辺氏は京都に特別な思い入れがあるとして、Astarのロゴは家紋をモチーフにしたもので、実は京都の八坂神社でインスピレーションを受けたと明かしました。さらにロゴの赤と青は、日の出をイメージしたもので、Web3の領域で遅れを取ってきた日本で、日の出のような存在になりたいという気持ちを込めたと述べました。
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今回のテーマはマスアダプションですが、渡辺氏は「Astar」のエコシステムの中核にあるのは財団のAstar Foundationである一方、分散性を重視したガバナンス構造であるため、時にはスピードが遅くなる懸念があると指摘。そのために今年に入ってから設立したのがスターテイル・ラボという会社で、ここと財団のタッグでAstarのエコシステムを拡大させていくと説明しました。
既存のインターネットが40億人のユーザーを持つ一方、Web3はまだ1億人に満たないと考えられますが、渡辺氏はマスアダプションしていない背景として「アプリが極めて使いづらい、分かりづらい」「キラーユースケースが存在しない」といった問題点を挙げました。そして、その根底にあるのは、Web3の世界でレイヤー構造になっていて、垂直統合で使いやすいエコシステムが作れていないという点に求めました。
「今はエンジンの専門家、ドアの専門家、バンパーの専門家はいるのですが、クルマの専門家がいないのがWeb3の現状です」と渡辺氏は述べ、これらを一気通貫で提供できるプレイヤーになると決意を示しました。今後様々な協業や提携が予定されているとして、取引所やステーブルコインも含めて手掛けていくことを示唆しました。
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そのスターテイルは、ソニーグループのソニーネットワークコミュニケーションズとの資本業務提携を発表。ソニーから約5億円(350万ドル)を資金調達し、様々な協業を進めていくということです。渡辺氏によれば、ソニーとの縁は、元社長で昨年亡くなった出井伸之氏がAstarの3番目の投資家だったという過去にもあったそうで、出井氏に「Web2では世界のプラットフォームを作れなかった、Web3でそれを君がやるんだ」と言われた事を振り返っていました。
今後の展開としては、
(1)1年以内に日本を代表する企業群とインフラレベルで協業を開始していく
(2)2年以内に垂直統合型で誰もがWeb3を使えるようなSaaSを提供していく
(3)4年以内に既存金融との橋渡しができる企業になる
(4)5年以内に既存金融と繋ぐキラーユースケースを作り、AIにおけるChatGPTのようなポジションを築く
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としました。渡辺氏は「日本はデジタルで負けてきましたが、政府も大企業もWeb3にとても前向きです。『日本で生まれた、世界のスターテイル』(※)と世界中で呼ばれるように、ガラスの天井を破っていきたいと思います」と述べて講演を締めくくりました。
※ソニー盛田氏の米国オフィスに「日本で生まれた、世界のソニー」という掛け軸が飾ってあったそう